「クロムエクセルって知ってる？」
マニアに愛される高品質レザーの独自の製法

革靴やバッグといった作品に利用されることが多いクロムエクセルレザー

本記事では、革職人がアメリカの老舗革製品メーカーホーウィン社に突撃取材し、クロムエクセルレザーが持つ耐久性の秘密を紹介させていただきます。

クロムエクセルは、靴やバッグ、ベルト、財布など、さまざまな製品に使用され、その独特の特性から多くのファンに支持されています。特にアメリカの老舗革製品メーカーのホーウィン社で最も有名な革の一つであり、その製造には特別な技術と手間がかけられています。

今回、革職人である僕がそのホーウィン社に突撃取材をしてきました。

2.ホーウィン社について

ホーウィン社（Horween Leather Company）は、1905年にアメリカのシカゴで創業された老舗の革製品メーカーです。創業者であるアイザック・ホーウィン（Isadore Horween）は、ヨーロッパでの革の技術を学び、その知識をアメリカで活かしました。ホーウィン社は、100年以上にわたり、高品質な革を製造しており、伝統的な技法と最新の技術を融合させることで、常に最高品質の製品を提供しています。

ホーウィン社は、その製品の多様性と品質の高さから、多くの高級ブランドや職人たちに愛用されています。特にクロムエクセル（Chromexcel）とシェルコードバン（Shell Cordovan）は、ホーウィン社を代表する革として世界中で高く評価されています。

3.【突撃取材】
ホーウィン社
伝統の製造プロセス

革職人である僕が直接訪問し、取材してきました。その中でも一番驚いたのは、クロムエクセルレザーの製造プロセスがとても複雑であることでした。

通常約18個の工程のところ、ホーウィン社は約28個の工程を経て完成します。このように工程が多い理由は、クロム鞣しと植物タンニン鞣しの両方が含まれているためです。このコンビネーション鞣しのプロセスは、クロムエクセルの柔らかさと強度、そしてその特有の美しいエイジングを生み出します。

①コンビネーション鞣し

コンビネーション鞣しとは、クロム鞣しと植物タンニン鞣しの両方を行う鞣し方法で、それぞれの長所を取り込むことによって、それぞれの短所を補うことができます。通常、一つの製法だけでは実現することのできない風合いを作り出すことが実現します。

ホーウィン社では、クロム鞣しの後に植物タンニン鞣しを行います。

クロム鞣しについて

革の柔軟性を高めるために、クロム鞣しが最初に行われます。これにより、革はしなやかで扱いやすくなります。

植物タンニン鞣しについて

次に、植物タンニン鞣しが行われます。これにより、革に強度と耐久性が加わります。

②オイル漬け

革はホーウィン社独自のブレンドオイルに漬け込まれます。この工程で、クロムエクセルに特有の豊かなオイル感が生まれます。

③乾燥と仕上げ

最後に、革は乾燥され、仕上げが施されます。この工程で、革の表面に美しい光沢が与えられます。

4.クロムエクセルレザーの特徴

クロムエクセルには以下のような特徴があります。

①圧倒的耐久性

クロムエクセルレザーは非常に耐久性があり、長期間使用しても劣化しにくい革です。特に靴やバッグなど、頻繁に使用される製品に最適とされています。またクロム鞣しと植物タンニン鞣しの組み合わせにより、クロムエクセルレザーは非常に柔らかく、しなやかです。これにより、高い強度を保っています。

②存在感の出る光沢感

ホーウィン社独自のオイルブレンドにより、クロムエクセルレザーには豊かなオイル感があります。このオイルが革に深い色合いと光沢を与え、使い込むほどに美しいエイジングが楽しめます。

③風味が変わるエイジング

クロムエクセルレザーの最大の魅力の一つは、そのエイジング（経年変化）です。使い込むほどに、革は独特の風合いと深みを増し、使用者の生活に馴染んでいきます。特に、オイルの含有量が高いため、時間と共に革の表面に美しいパティーナ（自然な艶）が形成されます。このエイジングプロセスにより、クロムエクセル製品は唯一無二の個性を持つアイテムへと成長します。

その他にも、クロムエクセルレザーは、独特の革の香りがあります。この香りは、ホーウィン社の伝統的な鞣し方法と使用するオイルによるものです。